さらに足を進める。左手に人だかりができている。
こちらは、カイゼルスベルク出身のヨハン・ガイラーのために作られた説教壇である。

1485年に作られた。炎が波打ち燃えさかるような複雑な形の曲線で描かれる、
この後期のゴシック様式は、フランボワイヤン・ゴシック(gothique flamboyant)様式という。
「フランボワイヤン」とは、「
燃え盛る」という意味。ゴシック後期の様式だ。
福音史家、聖母マリア、磔刑図など50体以上の彫刻が、細部にわたって施されている。
ヨハン・ガイラーは、1510年まで、教会の腐敗を批判することを恐れなかった。
民衆的な説教によって多大な感化を与えた説教師で、
宗教改革への道をひらいた人物の一人に数えられる。
この時代のすぐ後、宗教改革が起こり、このストラスブール大聖堂も一時期プロテスタント教会となるわけだから、彼の説教に心打たれた人々も多かったに違いない。
装飾は、十字架に掛けられるイエス・キリストと聖母マリア、ヨハネと使徒たち、楽器を奏でる天使たち。
きわめて宗教的なこの作品の中で、一つ異質なものが交じっている。

ガイラーはいつも犬を連れて説教をしに来ていた。
犬は、主人の話に聞き入るように、
じっといつも待っていた。辛抱強く。
その犬というのが、この説教壇に彫りこまれている。
観光客が触っていくので、黒ずんだこの犬は、ストラスブール大聖堂の名物だ。
「ストラスブールを歩く」は、まだまだ続きます。
ストラスブール大聖堂に関する記事は、こちらから
ストラスブールを歩く・5―大聖堂とともに天を仰ぐストラスブールを歩く・6―大聖堂の正面入り口を味わうストラスブールを歩く・7―大聖堂の中へストラスブールを歩く・8―ステンドグラスの意味ストラスブールを歩く・9―宗教改革に寄与したパイプオルガン
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