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アルプスの少女ハイジとキリスト教

今日5月8日は、ヨーロッパ戦勝記念日(ヨーロッパで第二次世界大戦の終結を記念する日)。
ドイツ、スイスと国境を接するアルザスから、ドイツ(フランクフルト)とスイス(アルム)を舞台にした『ハイジ』について書きたい。
アルプスの少女ハイジ

季節によって移り変わるアルプスの雄大な風景、天真爛漫に山を駆け巡るハイジ、山小屋で食べるとろとろのチーズ、ふかふかの干し草のベッド、鳴り響く教会の鐘の音…。日本のアニメ『アルプスの少女ハイジ』は、世界中で知られている。
このアニメの原作は、敬虔なプロテスタント教徒であったヨハンナ・シュピリが書いた『ハイジ』。原作は、祈りや信仰の大切さをしみじみと感じる作品である。
アルプスとフランクフルトは、対照的に描かれる。田舎と都市、自然と文明、貧困と富、治癒力と病…。どちらかが善で、どちらかが悪なのではない。両者の和解は、可能なのだ。

アルプスの少女ハイジ
トミー・ウンゲラー

クララが車いすから立つ場面が有名だが、クララが立てるようになるのは、アルプスの美しい自然ときれいな空気、そして心から神に祈った信仰心のおかげ。
アニメの中で、もう一つ感動的な場面がある。日本語版37話で、字を読めるようになったハイジが盲目のおばあさんに讃美歌を読んで聞かせる場面。宗教色を極力排した、日本のアニメの中で、この場面はとても印象的だ。
アルプスの少女ハイジ
『おひさまの歌』
黄金色の太陽は喜びと楽しみに満ち 
ままならぬ私たちは その輝きに
よみがえりのめぐわしい光を受ける
今こそ私たちは立ちあがって 
心ほがらかに晴れやかに 顔を上げて 空を眺める
神の救いとみめぐみは 私たちの心の耐えがたい痛みを癒し
私たちをこの世で またとこしえに やすらわせたもう 
十字架も苦しみも ここで終わりを告げ
荒れ狂う海も 立ち騒ぐ風もおさまって 
憧れの陽の光がここに輝く
満ちあふれた喜びと清らかな静けさ 
空の園生(そのお)で私の待つはそれ 
その地へと私の思いはこがれる

フランス語版37話では、同じ場面に、旧約聖書の詩篇23編(Psaume 22)があてられている。単純な日本語版の翻訳ではないのが、感慨深い。
アルプスの少女ハイジ
ハイジがクララの家で見るこの羊飼いの絵と、この詩は関係深い。
『主は私の羊飼い』
Le Seigneur est mon berger : je ne manque de rien.
Sur des prés d'herbe fraîche, il me fait reposer.

Il me mène vers les eaux tranquilles et me fait revivre ;
il me conduit par le juste chemin pour l'honneur de son nom.

Si je traverse les ravins de la mort, je ne crains aucun mal,
car tu es avec moi : ton bâton me guide et me rassure.

Tu prépares la table pour moi devant mes ennemis ;
tu répands le parfum sur ma tête, ma coupe est débordante.

Grâce et bonheur m'accompagnent tous les jours de ma vie ;
j'habiterai la maison du Seigneur pour la durée de mes jours.

聖書で人は羊に、神は羊飼いに例えられる。羊は、臆病で、すぐに道に迷ったり、襲われたりする弱い生き物。羊飼いは、そんな羊を導く。主なる神への信頼と従順を確かにした詩である。
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