アルザス最大のワイナリー、シュルンベルジェ家から知る、ユグノーという存在。

アルザスで最も大きな、耕作面積130haのぶどう畑を所有するゲヴヴィレーのワイン生産者、シュルンベルジェ
シュルンベルジェ

ゲブヴィレーの町の周りを囲むぶどう畑は、もとはローマ人が植えたものだが、中世時代に近くのミュルバー修道院が所有していたもの。
アルザスの修道院
ミュルバー修道院。すぐ隣の丘から修道院を見下ろす景色は、格別!

フランス革命後、1810年にニコラ・シュルンベルジェが、20haを超える畑をこの地に購入したことから、ワイン生産者としてのシュルンベルジェ家の歴史は始まる。
しかし、シュルンベルジェ家自体の歴史は、もっと昔に遡ることができるのだ。それは、アルザスのキリスト教信者が築き上げた輝かしい歴史…。

シュルンベルジェ家の家系図は、1426年まで遡る。
もとはドイツの革なめし職人であったが、アルザスのミュールーズに移り住み、宗教改革の渦中でプロテスタント教徒となった。
十字架
それからは、何世代にもわたって紡績業を生業とした。

1808年、27歳のニコラ・シュルンベルジェは、父の勧めで、ゲブヴィレーの町に居を構えるようになる。
イギリスの産業革命を目にしてきたニコラは、水車を購入し、繊維機械の会社を設立。
エコミュゼの水車
この会社は、フランスで唯一の繊維機械製造メーカー、世界的リーダーとして、1990年まで名を馳せることとなる!

一方で、1810年に、ぶどう畑を20ha購入したニコラは、その後さらに40ha購入。200haの森も所有しながら、ワイン醸造所シュルンベルジェを設立する。
シュルンベルジェ

それからの、このシュルンベルジェ家の軌跡はすさまじい。
この家族の中には、有名作家・編集者がいたり、フランスの文芸雑誌『新フランス評論』の創刊者がいたり、世界的な銀行の創設者がいたり…
何よりすごいのが、
1926年、コンラド&マルセル兄弟(もちろん名字はシュルンベルジェ)が設立した会社。
シュルンベルジェ
1927年に電気伝導度による岩石の検出方法を開発。アメリカにわたり、油田探査を行う世界最大の企業となる会社を設立する。
「シュルンベルジェ」「SLB」でネット検索すれば簡単に出てくるので、調べてみてほしい。

石油
世界で初めて石油掘削による探査を行った場所は北アルザスにある。

フランスにおけるカルヴァン派のプロテスタント教徒をユグノーというが、シュルンベルジェは、ユグノーの家系であった。
十字架

カルヴァン派は、現世において勤勉であることこそが神の意志に沿うことであり、その結果得られた富は神から与えられたものであるという理念を持っていた。商工業者でカルヴァン派になった者たちは、とにかく働き者であった。

アルザスワイナリー、シュルンベルジェも順調に拡大した。20世紀には害虫(フィロキセラ)によって、ぶどう畑は壊滅的な状態になったが、希望を捨てず働き続けた。
神のちからを信じ、教会と結びついていた家族の歴史を大切に守り続けた。
シュルンベルジェ
本ブログの誕生年2017年のリースリング。ラベルには、ミュルバー修道院の修道士が描かれている。

本ブログで、ワイナリーを紹介することは、あまりないと思うが、アルザスには素晴らしいワイン生産家がたくさんいる。生産家自身が口に出すことは少ないが、そのほとんどが、固い信仰心を持っている。
畑で働く人々は、神の恵みを知っている。
十字架
ぶどう畑の中に点在するキリストの十字架像を見るとき、アルザスのワイナリーだけではなく、世界中で奮闘している神を信じる人たちの姿が目に浮かぶのは、私だけだろうか?

高級官僚やらコンサルタントやらインフルエンサーやらが幅を利かせ、健康なのに働かない人でもお金をもらえるような変な時代だけれど、この世界は汗水流して働く人たちのおかげで成り立っている。
フランスのキリスト教信者たちは、たっぷり働いて、しっかり休む。
労働も大事。休息も大事。

日本では簡単なことではないのかもしれないけれど…
別に日曜日じゃなくていいから、必ずゆっくり休んで、自分や家族としっかり向き合う日を週に1回作ってみない?
ゴールデンウィークやお盆じゃないときに、自由に1~3週間くらい有給休暇を取ってみない?みんなで背中を押しあって。
シュルンベルジェ
元気なうちにしかできないことって、数えきれないほどたくさんあるから。
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コメント

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以前、アルザスのワイナリーを案内して頂いたとき、ひーひーおじいちゃんがこのタンクを買ってワイン作り始めたんだ、1500年代にって話しをきいて、歴史の浅い北海道で生まれ育った私はアルザスワインと家族の歴史の深さを感じましたコロナも落ち着いたので、そろそろ休みをとってアルザス旅行に行きたいです

ぶるぐれんとうざき

コメントありがとうございます。
ブログをご覧くださり、ありがとうございます。
私は、(既に昔も涙もろかったですが、)最近は、昔以上に感動することが多くなりました。
家族の歴史がどこの家にもあって、自分が受け継いだものを、何とか次の世代につなげたいと、みんな奮闘しています。
色々な危機で、色々なことが難しい世の中ですが、こつこつと子供たちに家族の伝統を伝えることが大事なのでしょうね。
子供たちの未来が、今より明るくなりますように。
またアルザスにいらっしゃる際には、ぜひお声をおかけくださいね。

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涙が出るほど感動できることが多いのは、とうざきさんの人生が豊かな証拠ですね。
いつも拝見させて頂いているプログがとても興味深く楽しい理由がわかる気がします。
いつかその経験を北海道の子供達にもお伝えください
お身体に気をつけて、これからもどうぞよろしくお願いします

ぶるぐれんとうざき

これからもよろしくお願いします。
温かいメッセージありがとうございます。
小心者なので、毎回ドキドキしながら、記事を投稿しているのですが、そう言っていただけると、勇気がわきます。
今まで支えてくれた人たちに、いつか何かの形で恩返しがしたいです。
これからもどうぞよろしくお願いします。
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ぶるぐれんとうざき

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