薔薇と百合と

6月の花といえば、バラとユリ。

毎年、アルザスのサヴェルヌでは、6月の3週目の日曜日に、バラ祭り&モダンローズの国際コンクールが開催される。
サヴェルヌ

サヴェルヌは、「バラの町」とも呼ばれ、フランスで2番目に古いバラ園で知られる町なのだ。
約880種類のバラを約5,500本栽培している。
サヴェルヌ

ベルサイユのばら』や『星の王子さま』の影響で、フランス=バラのように思っている人も多いと思うが、フランスの国花は、ユリとアイリス。
バラは、イングランドの国花である。15世紀には30年間続いた「薔薇戦争」なんてものもあった。紅茶と同じく、イギリス人は、文化の形成にうまくバラを利用した。
バラ

古代ギリシャ、ローマから、ヨーロッパ各地へ…。
クレオパトラから、ナポレオンの妃ジョゼフィーヌへ…。
数ある花の一つから、バラに一つの社会的性格が与えられた。
バラ

バラといえば、クリスチャン・ディオール
第二次世界大戦後、女性の喜びと自由を表現し、1947年に「ニュールック」を発表した。
ファッション史に革命を起こした「ニュールック」は、バラから影響を受けていた。
花のような女性、柔らかい肩、開いたデコルテ、細いウエスト、花弁のように広いスカート。
ニュールック
同時に、ゴージャス感のあるヒョウ柄も発表した。
ヒョウ柄の特徴が、ロゼット(バラの花の形)模様であることも考えると、何か因縁のようなものを感じる…。

バラが地球上に現れたのは5000万年以上前とされているが、今世界中に咲いているバラの故郷は、中国
茶や陶磁器が中国から入ってきたことは周知の事実だが、バラもそうだというのは、なんだかイメージと合わない。
社会情勢が不安定になる前の中国は、高級茶や高級陶磁器、そして高級バラの産地であった。
陶磁器


中世の詩人や作家、画家はこぞってバラを描いたが、同じくよく描かれたのはユリ。
ユリとマリア
聖母マリアの純潔を表す花。

12世紀のフランス王家は、ユリを正式なシンボルとした。フランス国王は、ユリを自らのシンボルに選ぶことによって、自分が最も敬虔なキリスト教徒の王であるということを示した。
ユリ
剣にしか見えないこのシンボルも、ユリの花で、三位一体を示すものらしい。

西洋の花のイメージが強いユリだが、実はその故郷は日本
日本では、美女を「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」と表現する。
日本語版の旧約聖書には、バラとユリが登場する。「わたしはシャロンのばら、野のゆり」(雅歌2章1節)

古くから自然を愛でてきた日本では、花と権力とを結びつけることは少なかった。
パスポート
天皇家の紋章、菊でさえ、貧富の差など関係なく用いられ、私たちの生活に切っても切れないものになっている。

初期キリスト教美術において、バラとユリは「天国の花」を意味し、生命や光の象徴でもあった。
神は自然を通して真実を啓示する。
金や権力に目がくらんだ人たちが使用してきた花とは違った花が世界を彩るとき、今までとは違った未来が描けるようになるのかもしれない。
ストラスブール大聖堂のステンドグラス
ストラスブール大聖堂のステンドグラス
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