1887年
7月
7日、帝政ロシア領ヴィテブスクで、ユダヤ系の家庭に生まれた
シャガール。
織姫と彦星が年に1度会う七夕の今日は、「愛の画家」と呼ばれるフランスを代表する画家の残したステンドグラスを紹介したい。
私がシャガールを初めて知ったのは、テレビアニメ『
ちびまるこちゃん』で。
「じゃがいもみたいな名前の人」で、名前を覚えたっけ。
花輪君の両親は、フランスにいるし、フランス語が話せるし、『ちびまるこちゃん』にはフランスに関わる話がたびたび登場する。
残念ながら、作者のさくらももこは、若くして亡くなってしまったが、1度会って、「いつも笑わせてくれてありがとう」と感謝の気持ちを伝えたかった。

シャガールの作品は、甘美で詩的。2つの世界大戦やロシアの革命など激動の時代をくぐり抜けてきたとは思えないほど、
空想することの楽しさを教えてくれる作品ばかり。
シャガールは、
97歳で亡くなるまで、絵画以外にも、彫刻、セラミック、ステンドグラス、タペストリーなど制作の幅を広げていた。アルザスの隣のモゼル県にある
コルドリエ礼拝堂のステンドグラス『平和』は、イチオシ!

シャガール一人の手では作れなかったこの作品。
1640年から続くステンドグラスの生産者、ランスの老舗アトリエ・シモンとの出会いから、実現した。アトリエでは、絵を単に写すのではなく、想像力とノウハウを最大限に発揮して、色で光を表現した。

もととなった絵。
まず中央。
詩情あふれるカラフルな生命の木。
人間の男女は、世界の調和と平和において重要な役割を果たすように運命づけられている。

左下。
エルサレムに入城するキリスト。彼は、支配するためではなく、仕えるためにやって来た。彼は、非難するためではなく、救うためにやって来た。彼は、死を蒔くためではなく、豊かな命を与えるためにやって来た。

左上。
救世主キリストの磔刑図。その左には天と地をつなぐはしご(ヤコブの夢)。

上。
太陽の色をまとったキリストが弟子たちを諭している。
こんな風に説教をしているのだろう。
「悲しむ人々は、幸いである、その人たちは慰められる。
柔和な人々は、幸いである、その人たちは地を受け継ぐ。
憐れみ深い人々は、幸いである、その人たちは憐みを受ける。」(マタイによる福音書5章)

ユダヤ教の象徴的存在、メノーラー(燭台)が描かれている。通常は、7枝だが、こちらは3枝。人間の心を照らす光。
右下。
イザヤと思われる預言者が聖書を読んでいる。弟子たちが神の言葉に聞き入っている。
正義と平和の支配を地上に打ち立てようとするキリストを迎える準備をする、沈黙と希望のとき。

下。
サルブールの町を思わせる家々が描かれている。
よく目を凝らして見てみないと見えないが、生命の木の幹に寄りかかるようにして、女性と子供が描かれている。
イザヤ書11章1、2節を思わせる。「エッサイの株からひとつの芽が萌えいで、その根からひとつの若枝が育ち、その上に主の霊がとどまる」

この子供をキリストと見ることもできるけれど…。
平和の根幹にあるのは、この全く目立たない、
何気ない日常と、
母が子に向けるような愛情であるということを、シャガールが示したかったのではないかと思えてならない。
聖書を「詩の一番大きな源」としながら…。
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