ナポレオンと戦争と日常に花を添えるゼラニウム

葵といえば、徳川葵。
あおい

天竺葵(テンジクアオイ)といえば、アルザス。
リクヴィル

野生のゼラニウム(フウロソウ属)は、アルザスに中世時代から存在したが、現在、アルザスの窓辺を飾っているゼラニウム(テンジクアオイ属)は、アフリカ南部が原産地の多年草。
ゼラニウム
アルザス人画家シャルル・スピンドラー作

オランダで多く栽培されていたゼラニウムを、アルザスの有名な苗木商&園芸家、ボウマン家が19世紀にアルザスの展示会で大々的に紹介した。
このボウマン家の人々、代々、自分の子供に「ナポレオン」の名前を付けていたほど、熱狂的なナポレオンファンだった。

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ところで、フランス(特にアルザス)には、熱狂的なナポレオンファンが多い。
リドリー・スコット監督の『ナポレオン』には出てこないが、ナポレオンは、戦いに強かった(小さいのを含めると86戦77勝)だけでなく、様々な功績を残した。
ナポレオン
1799年、フランス国務院設立。
1800年、フランス銀行設立。
1802年、フランスに最初の高校設立。
1803年、アメリカにフランス領ルイジアナ売却。
1804年、フランス民法典制定。
1806年、凱旋門の建設開始。帝国大学設立。
1808年、高校の修了を認証する国家試験バカロレアの導入。
1810年、フランス刑法典制定。ゴミ収集システムの導入。
など。

実は、ナポレオンは19世紀初頭にストラスブールに滞在している。
フランス最大のユダヤ人コミュニティがあったアルザスで、ユダヤ人の地位を向上させ、その後、フランスの力が及ぶ全ての国・地域で、ユダヤ人の地位を向上させた。

セントヘレナ島で生涯を閉じたナポレオン・ボナパルトは、島の「ゼラニウム谷」に埋葬された。
ゼラニウム
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苗木商のボウマン家がゼラニウムに注目するようになったのは、当然の帰結だろう。

ゼラニウムは、20世紀初頭にアルザス、そしてフランス全土に広まった。
(それまでは、一般の家庭ではあまり花を飾らず、飾るとしても食用作物が中心であった。)
ゼラニウム
アルザス人画家ギュスターヴ・ストスコプフ作

アンシおじさんやアルザスの画家たちが積極的に描いたことで、アルザスの景色=ゼラニウムのイメージが定着した。
アルザスの写真、絵画、壁紙、食器、生地に、今でも彩りを与え続けている。
手入れが簡単で、たくさんの花を咲かせ、挿し木で簡単に増やすことができる花。
燦燦と降り注ぐ太陽が好き。
ゼラニウム
アルザス人画家アンリ・ルクス

1937年に公開されたジャン・ルノワール監督の『大いなる幻影』でも、オークニグスブール城の窓辺にゼラニウムが飾られた。
大いなる幻影
この映画、第一次世界大戦でのフランスとドイツの戦いを背景に描いた反戦映画。
第二次世界大戦間際に公開され、物議をかもしたようだが、よくこの2つの大戦の間にこんな映画を作ったものだと感心してしまう。政治色を排して見ても、芸術的で、おすすめ。

1959年には、フランスに「Concours des villes et villages fleuris(花のまちコンクール)」が創設され、環境美化活動が活発になった。
フランス全土で、ゼラニウムがよく飾られるようになった。
ところで、この「花のまちコンクール」の起源もまた、アルザス
カイゼルスベルグ
アルザスのディボルスハイム村の司祭が、第二次世界大戦後、地雷の除去を手伝っていたとき、地雷を一つ見つけるたびに、花に置き換えていったというもの。
戦争で荒廃した町の美しさを取り戻したい」という一人の司祭の想いが、コンクールになり、世界へ広がった。
(ウィキペディアの情報は、正確でないこともあるので、ご注意を!)

住民たちは、義務ではないが、自身の家を綺麗に飾る努力を続けている。
アルザスでは、地域の園芸産業が発展した。
ゼラニウム

ところで、ゼラニウムの語源はギリシャ語。
ゼラニウム(フウロソウ属、Geranium)=(Géranos)
ゼラニウム(テンジクアオイ属、Pelargonium)=こうのとり(Pelargos)
果実に錐状の突起があり、長いくちばしに似ているため、こう呼ばれるようになった。
日本を象徴する鶴と、アルザスを象徴するこうのとり
フランスアルザスの絵
アルザス人画家アンシおじさん

鶴といえば、日本の昔話『鶴のおんがえし』。
決して見てはいけないと言われたものを見てしまったために、幸せな生活が台無しになってしまう話。
鶴のおんがえし

世界各地に存在する「見るなのタブー」の誘惑の話。
旧約聖書の一番最初、創世記3章で、いきなり紹介されている。
アダムとイヴが、エデンの園で決して食べてはならないと禁止されていた実を食べてしまったため、楽園から追い出されてしまう話。
誘惑
人類最初の罪は、キリストによって赦される
その他の罪については、それぞれ神が裁きを下している。
信じるか信じないかは、あなた次第。

私は、現在、『こうのとりのおんがえし(仮題)』という長編作品を構想中である。
日本にゼラニウムが初めて伝わった場所、私がとてもお世話になったあの地域を舞台に、物語が繰り広げられる。
チャットジーピーティーには、絶対に書けない話だよ。
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ぶるぐれんとうざき

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