天文時計のすぐ前に、ひっそりと佇む見事な柱がある。
こちらもまた見逃してはならない。最後の審判を描いた
初期ゴシック彫刻の傑作品である。
上段に、王座につくイエス・キリスト、横に、キリストの受難のシンボル(十字架、槍、茨の冠)を持つ3人の天使、中段にラッパを吹き祝福する4人の天使、下段には、4人の福音書記家が描かれている。

4人の福音書記家の足元には、伝統的キリスト教美術における
象徴表現があるので、何が誰を表しているのか、一目瞭然だ。
人(天使)はマタイ、
雄牛はルカ、
獅子はマルコ、
鷲はヨハネである。
この4体は、人=
キリストの誕生、牛=キ
リストの犠牲、獅子=
キリストの復活、鷲=
キリストの昇天を表すとも解釈されている。
キリスト教絵画や彫刻によく登場するので、覚えておきたい。

天文時計に向かって、ぐっと左側に目を向けると、ライトアップされた男の
上半身像が見て取れる。
こちらにもエピソードが一つある。15世紀頃、ゴシック様式の線の細いこんな柱は「すぐ壊れてしまうに違いない」と考えた石工が、大聖堂に使われていた石を持ち帰り、自分の上半身像を彫った。「大聖堂が倒壊するまで見届けてやろう」と、柱の前に、その彫刻を置いたという。
そう考えると、恨めしそうに眺める人物の横顔も、説教壇の犬と並んで、愛嬌があるように見えてくる。
「ストラスブールを歩く」は、まだまだ続きます。
ストラスブール大聖堂に関する記事は、こちらから
ストラスブールを歩く・5―大聖堂とともに天を仰ぐストラスブールを歩く・6―大聖堂の正面入り口を味わうストラスブールを歩く・7―大聖堂の中へストラスブールを歩く・8―ステンドグラスの意味ストラスブールを歩く・9―宗教改革に寄与したパイプオルガンストラスブールを歩く・10―大聖堂のマスコット犬ストラスブールを歩く・11―ロマネスク様式の残る大聖堂の北翼廊と彫刻ストラスブールを歩く・12―聖堂の中心で愛を叫ぶストラスブールを歩く・13―嬉しいときも悲しいときも知っているからくり時計
スポンサーサイト
コメント