むかしむかし(1390年)、アルザス、リボヴィレの町に、仕事道具の
笛を壊して、途方に暮れる音楽家がいた。そこを通りがかったリボヴィレの領主、リボピエール伯爵は、道端で泣いている音楽家を哀れに思い、新しい楽器を買うための銀貨を与えた。翌週、音楽家は、楽器奏者、曲芸師を集め、領主へのお礼に、城から町を練り歩いた。

それから333年後、リボヴィレの町に、一人の天才
フルート奏者が誕生する。
世界最古の楽器と言われる、柔らかく清澄な音色のこの楽器を、
世に知らしめたのは、
ジャン・バプテスト・ヴェンドリング。

1777年に、ドイツでモーツァルトと出会い、今までフルートの価値を認めていなかった
モーツァルトに、フルートのための協奏曲を書かせるほどまでに影響を与える。
ヴェンドリングは、フルートのための曲だけを書く作曲家としても活躍した。
アルザスで、もう一つ有名になった楽器がある。
鍵盤楽器だが、その発音に弦を用いず、管の中の空気を振動させて音を出す楽器。
起源は、人がその息を吹き込んで鳴らした一本の
笛。
教会と結びついた、多彩で荘厳な音色の
パイプオルガン。

リボヴィレの聖グレゴワール教会のオルガン(ジルバーマン兄弟作)
オルガン製作者の家系の出の
ジルバーマン兄弟は、ストラスブールでオルガンを手がけ、ヨーロッパ中で名を馳せた。
ヴェンドリングに出会った翌年、ストラスブールに3週間ほど滞在したモーツァルトは、ストラスブールで何度かジルバーマン作のオルガンを演奏した。

それから約100年後、そのオルガンは、
アルベルト・シュヴァイツァーが演奏している。
昔、演奏家たちの同業組合本部が置かれたこの土地で、人々が結びついた。

リボヴィレの元同業組合本部
クラシック音楽の主役となれるのは、バイオリンやピアノだけではない。実にたくさんの楽器がある。
クラシック音楽が何度聞いても飽きないのは、先人たちが時に悩み、苦しみ、悲しみ、時に喜びに満たされながら、それぞれの楽器を長く大切に弾き継いできたおかげであろう。
クラシック音楽を絶対聴きたくなる!弾きたくなる!クラシック音楽の魅力を違った視点で伝える以下の作品は、外国人にも日本人にも絶対おすすめ。
「ここか…!」という所に、アルザスの名前が登場する。

ドラマ
『のだめカンタービレ』書籍
『蜜蜂と遠雷』冒頭の話が起源である
楽器奏者の祭り(fête des ménétriers)は、現在までリボヴィレで600年以上続くアルザス最古の祭り。
毎年9月の第1週目の週末に開かれているこのお祭りの、パレードは今日!

楽しくて、ちょっと怖い、一風変わったこの行列をご覧あれ。
スポンサーサイト
コメント