今日1月27日は、
ホロコースト記念日。アウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所がソ連軍によって解放された日である。
あまり日本では知られていないが、ソ連は、第二次世界大戦で最も多くの犠牲者を出した国。ソ連の軍人・民間人の犠牲者数は2,000万人以上だった。
フランスのシナゴーグ(ユダヤ教の会堂)で目にする
ダビデの星。

私は、フランスに着いた当初、この印の付いた建物にいちいちギョッとしていた。
ナチスドイツが、ユダヤ人を識別するためのバッジとして用いていたイメージが強かったから。(『
シンドラーのリスト』や『
オットー 戦火をくぐったテディベア』などに出てくる)
日本のお寺で目にするまんじ(卍)。地図上で寺院仏閣を表す記号として、今も使われている。

私は、久しぶりにフランスから日本に帰って、この印を見た時、ギョッとした。
日本で使われている左万字は、幸運のシンボルだが、
右万字は、ナチス党、ナチズム、ネオナチのシンボル(ハーケンクロイツ)だったから。
1940年~45年、アルザスはナチスドイツに占領された。

実際にヒトラーがストラスブール大聖堂を訪れたこと、大聖堂にハーケンクロイツの旗がはためいていたことなどは、ちょっと想像するだけで怖ろしくなるよね。
元はスキー場であったアルザスのストリュートフ。
この綺麗な景色の場所に、ナチスが何を置いたかというと…

ナッツヴァイラー強制収容所を設置した。右下にあるのは、絞首台。
多くの人々が、採石などの強制労働に従事させられ、命を落とした。
ナッツヴァイラー強制収容所では、様々な人体実験が行われた。
ドイツ人医師オイゲン・ハーゲンは、自身が開発したチフスのワクチンの効果を確かめるため、強制収容所の患者にチフス菌とワクチンを接種させた。結局、
ワクチンを打っても打たなくても同様の症状が現れることがわかり、ワクチンの効果は証明できなかった。強制収容所の中では、チフスが蔓延した。

ガス室も設置され、様々な実験に使われた。
大戦下のヨーロッパでは、ラジオが重要な役割を演じた。宣伝扇動の機能や暗号による連絡といったように、心理戦や軍事作戦に使われた。
アルザスでは、小型ラジオが配られ、広場などに拡声器が取り付けられ、宣伝カーが町や村の通りに出没した。ドイツの宣伝やヒトラーの演説が、一日中、人々の耳に届けられた。ラジオは、
外界への関心を失わせ、理性的な判断を奪った。

『1984年』の世界…。
ラジオや宣伝カーに代わった今日のテレビやスマートフォン。…どうして、今のニュースや情報番組は、こんなに画一的なのだろう?
アルザス人男性は、ドイツ軍に徴兵され、第二次世界大戦を「ドイツ兵」として戦わなければならなかった。約13万人が、強制召集兵「マルグレ・ヌー(Malgré-nous)」として動員され、多くは東部戦線に送られた。それに従わない若者や、その家族は、ナッツヴァイラー強制収容所などに送られた。アルザス人女性も約1万5千人が召集され、ドイツの軍、工場や農場で働かされた。

マルグレ・ヌーの戦時中の体験は、ドイツに協力した者として、戦後フランスで
非難の対象となった。戦争が終わって戻ってきた後も、彼らは
沈黙を強いられた。
1933~1945年にドイツで政権を掌握した国民社会主義ドイツ労働者党(略してナチス)。
この政党は、「積極的キリスト教」と称して、
ルターの思想、クラシック音楽、上記のマーク、報道などを、歪めて政治的に利用した。
今の私たちは、この過去に対して、何をするのか?
ナチスを思い起こさせるから、ダビデの星や卍を使うことをやめるか?
ナチスが使ったから、クラシックを聴くことをやめるか?
嫌な過去は消し去ってしまった方がいいのか?
歪められたものを、そのまま受け取っていいのか?
社会のムードに従わない人は、沈黙すべきなのか?
過去から学んだ人たちが、世界のあちらこちらで、今立ち上がろうとしている。
考えることも、表現することも自由!全ての人を柵の中に閉じ込めて、ずっと見張ることなんてできやしない。
たとえ、それがビッグテックでも。

ナッツヴァイラー強制収容所の監視塔。
この世の中は、色んなものが歪められている。
ゴッホの晩年の『星月夜』みたいな感じ。

私は個人的には、この歪んだ絵が好きではないが、
歪みを考慮した上で、良さを見極め味わっていけたら、いいのだろうね。
注:左の大きな糸杉は、ストラスブール大聖堂ではありません。
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